季節は春。
花が咲き、緑が生い茂り、動物たちは自由を謳歌している。
そんなありふれた日常を尻目に、博麗神社の巫女である博麗霊夢は境内の掃除をしていた。
「秋は落ち葉、冬は雪。それと比べると春は楽ね」
少しぼやきながら霊夢は掃除を続けていた。
ふと、視界の隅に小さな人影が現れる。
見ると境内の入り口から、見慣れた少女が近づいてきていた。
「アリスじゃない。珍しいわね、あんたが来るなんて」
どこか意地悪そうな雰囲気を持たせて、霊夢はそう言った。
「あら、来たら迷惑だったかしら?」
しかしアリスに動じた様子はない。むしろ慣れた様子で返していた。
「別に。それより何の用かしら? お賽銭ならあっちだけど」
「残念だけど、今持ち合わせはないの」
わざとらしく肩をすくめながら、アリスは軽くため息をついた。
「そのかわり、こんなものならあるけどね」
そう言ってアリスは後ろ手に持っていた袋を差し出した。
「あら、気が利くじゃない」
「そう思うなら、何か出てくるものじゃない?」
アリスが持っていたのは人里でも評判の煎餅だった。
「アールグレイをお願いするわ」
軽くウィンクしながら、アリスは霊夢にそういった。
「……お生憎様、紅茶なんてお洒落なものはないわよ」
「時化た神社ね……」
「大体ね、煎餅に紅茶なんて合わないでしょうが」
「それもそうね」
あっけらかんとした表情のアリス。
初めからないことはわかっていたようだ。
「まあいいわ、とりあえず上がりなさいよ」
「それじゃあお邪魔して」
霊夢は一旦掃除を中断し、社殿の中へと向かうとアリスもそれに続いた。



「それで、何の用かしら?」
お茶を啜りながら、霊夢はアリスに問いかけた。
「別に大した用じゃないわ」
そう言ってアリスは緑茶の入ったティーカップに口を付ける。
「最近人里のほうで変な噂があるんだけど、霊夢は聞いてないかしら?」
「変な噂?」
アリスの言葉に霊夢は眉をひそめた。
「……特にそういったことは聞いてないわ。で、どんな噂なの?」
「どんなって……」
急にアリスはそこか恥ずかしそうに頬を染めた。
「その……人攫いがいて……」
「いきなりどうしたのよ、気持ち悪い」
もじもじとするアリスに霊夢は辛らつな一言を投げつける。
「もうっ! 人が恥を忍んでいるのに……」
「はいはい、いいからさっさと噂の内容を教えなさいよ」
「……はぁ、魔理沙も大概だけど、霊夢もよね」
頭に手を当てながらアリスは肩を落とした。
「こほん……」
一旦咳払いをして、アリスは続ける。
「最近人攫いが出ているらしいの」
「人里で?」
「そう。しかも狙われてるのは若い女性ばかりで、しかも……」
再び頬を染めるアリス。だが今度はしっかりとその続きを言った。
「……調教して好事家たちに売り飛ばしている、って噂よ」
言い終えると、二人の間に沈黙が走る。
二人の表情は真剣そのものだった。
しかしややあって
「ぷっ……」
霊夢は思わず吹き出してしまった。
「あははっ、なにそれ。アリス本の読みすぎじゃないの?」
「なっ……!」
今度は先ほどとは別の意味で頬を染めるアリス。
「そんな三文官能小説みたいな話を信じてるの?」
笑いのあまりに出てしまった涙をぬぐいながら霊夢はたずねる。
「べ、別に信じてるわけじゃ……」
「ただ人が消えてるっていうのは本当だし、人攫いを見たって言う人も結構多くて……」
「ふーん……」
興味なさそうに霊夢はお茶を啜っている。
「……どうかしないの?」
「その話が本当なら異変になるでしょうけどねぇ……」
外に目をやりながら霊夢は言う。
「まだ噂の段階だし、それに人里のことならあのワーハクタク辺りのほうが適任でしょ」
「慧音さんのこと?」
「そ。しかし、魔法使いのあんたがどうしてそこまで人里のことを気にするのかしら」
アリスを覗き込むように霊夢は顔を近づける。
「もしかして人里に恋人でも出来た?」
「んなっ……! なわけないでしょうが!」
卓袱台を勢いよく叩きながら否定するアリス。
あまりの勢いに自分の手を傷めてしまったのか、痛みを放るように手を振っている。
「……最近魔理沙を見ないのよ」
「ああ、そういえばそうね」
「魔理沙の家に行っても蛻の殻だし、他の人に聞いても知らないって」
「奔放なのは魔理沙の性格じゃない。なに? あんたってそっちの気が合ったの?」
「だから違うって…… もうっ、話の腰を折らないでよ!」
語尾を強めるアリスに流石に懲りたのか、霊夢もまじめな顔つきであり素の言葉に耳を傾けた。
「ちょっと貸してる本があったのよ。で、それが必要になったから返してもらおうと思ったんだけど……」
「家にはなかったの?」
「なかったわ。だから魔理沙を探してるのよ」
そう言うと、霊夢は神妙な顔つきで考え込んだ。
その様子をアリスはじっと見つめている。
「幻想郷はそう広いわけじゃないから、聞き回ればいずれは見つかると思うけど……」
「とりあえず人里と森、後は紅魔館の方は聞いたわ」
「なら後は竹林か山、ついでに冥界と地底ってとこかしら。」
「そうね」
アリスは頷く。
「わかったわ。魔理沙のほうは一応こっちでも探してみるわ。私の方があんたより顔広いだろうし」
「……なんか気になる言い方だけど、お礼は言っておくわ」
「ま、気にしないでいいわよ。確かに気になることだし、これももらったしね」
そう言って霊夢は卓袱台の上の煎餅に手を伸ばす。
「それじゃあ私は帰るわ」
「あら、もうちょっとゆっくりしていってもいいのに」
煎餅を加えながら霊夢はアリスに声をかけた。
「今魔法の研究をしているのよ。それで忙しくてね」
「ああ、それで本が必要だったの」
合点がいったのか、霊夢は何度もうなずいている。
「そういうこと。それじゃあね」
去って行くアリスの背中を霊夢は煎餅を幸せそうにほおばりながら見送った。
「行方不明、ねぇ……」
どこか楽しげにそうつぶやく霊夢。
だがそれを聞くものは誰もいなかった……





日もすっかり暮れてしまい、月は静かに光を放っている。
「………」
アリスは自宅で机に向かっていた。
机の上にはいくつかの本と一体の人形。
「そろそろ休もうかしら……」
そう言って立ち上がった瞬間、入り口のほうから小さな音がした。
「誰?」
しかし返答はない。
ゆっくりとドアに近づき、ノブに手をかける。
なぜか不意に悪寒を感じたアリスはややためらう。
「誰かいるの?」
たずねるが、やはり返答はない。
何かあったときのために、アリスはグリモワールを持っている手に力を入れた。
「……誰?」
ゆっくりとドアを開け、覗き込むようにその隙間から外を見る。
しかしそこには誰もいなかった。
「気のせいだったのかしら……」
思えば別の何かの音がすれば消えてしまうような音だった。
疲れているから幻聴みたいなものを聞いてしまったのだろう。
「少し根をつめすぎたかしらね」
そういってドアを閉めようとすると、遠くで草の揺れる音がした。
普段なら気にも留めないような音。
しかしなぜか今回はやけに気になってしまった。
「……少し気になるわね……」
アリスは一旦部屋に戻り、上海人形をつれてくる。
そしてその正体を確かめるべく、音のした方へと向かっていった。
なにやら近くで物音がする。
それがさっきの音の原因なのかはわからないが、アリスはその音のする方へと向かっていった。
「……ん……」
『人の声? それに……』
聞こえてきたのは、くぐもった人の声。
そしてその声はどこか聞き覚えがあった。
息を潜めながら、ゆっくりとその方へと近づくとやがて人影が見えてきた。
「魔理沙……?」
見覚えのあるその姿にそうつぶやくアリス。
彼女のトレードマークと言っていい巨大なリボンのついた帽子。
そこから除く金色の髪も小柄な体格も、アリスの知る魔理沙そのものだった。
「もう、いるなら……」
久しぶりに会う彼女に近づこうとした瞬間、思わずアリスは草陰に隠れてしまった。
なぜなら
「ん……んちゅ……」
そこにいたのは魔理沙だけではなかった。
見覚えのない男がもう一人、彼女と一緒にいた。
「ふぁ……ははっ、なかなかいいもの持ってるじゃないか」
しかもただ一緒にいるだけではない。
男は下半身を露出させ、そこにある一物を魔理沙は口で愛撫していた。
『ちょ、ちょっと……なにしてるのよ!』
思いもよらない光景にアリスの鼓動は早くなる。
「ん? 今何か音しなかったか……はむ……ちゅぅ……」
口に一物を含んだまま、魔理沙は先ほどまでアリスがいた場所に眼をやる。
『き、気付かれた……?』
じっと息を潜め、気配を消そうとするアリス。
その間も心臓はこれ見よがしに大きく鼓動していた。
「気のせいか……まあいいや」
再び魔理沙は肉棒を丹念に口で愛撫する。
「大きさといい……れろ……硬さといい……んぅ……私好みだぜ」
肉棒と魔理沙の口が奏でる音がどんどんと大きくなる。
より激しく、よりいやらしく、魔理沙の舌が肉棒に絡みついていく。
その様子をアリスは、わずかな草の隙間からのぞいていた。
『うわ……すご……』
初めて見る男と女の情事にアリスは耳まで赤く染めていた。
しかもそれがよく見知った少女なのだからなおさらだ。
気が付くと、アリスは当初の目的も忘れて二人の情事に没頭している。
「んちゅ……れろれろ……じゅ……」
魔理沙の口と男の肉棒が奏でるいやらしい音が、静かに響き渡る。
「んっ! んんっ……!」限界が近づいてきたのか、男は魔理沙の頭をつかむと激しく腰を振り出した。
「んごっ……ん……んん〜っ!」
あまりの勢いに魔理沙の帽子が地面に落ちる。
そのおかげか、よりはっきりと魔理沙の表情が見て取れた。
口からこぼれる声こそ苦しそうだが、その表情に嫌がっている様子はない。
むしろうっとりとした表情でその行為を受け入れていた。
「ん!? んぶぅ!」
男は喉奥まで勢いよく突きこむと、そのまま動きを止めた。
『ま、まさか……』
いつか知った知識が、アリスにそれが何を意味しているのかを指し示す。
「ん……んく……」
魔理沙は喉を鳴らしながら何かを嚥下している。
ややあって魔理沙は口から肉棒を吐き出す。
「へへっ……ずいぶんと濃いのを出したじゃないか……」
うれしそうにそういう魔理沙。
その口の端からわずかに一筋、白濁した液体が垂れ落ちる。
「ん……もったいないな……」
指でそれをぬぐい、男に見せ付けるように舐めとった。
『あ、あれって……精液、よね……でもどうして魔理沙が……』
頭の中で自分に問いかけるアリス。
もしかして二人は恋人同士なのだろうか。
ここ最近見当たらなかったのはその男とずっと一緒にいたからかもしれない。
なれない事態にうまく考えがまとまらない。
そうしているうちに、再び魔理沙と男は何かを始めていた。
「まだまだ元気みたいだし、次に行こうか」
その声にアリスも魔理沙のほうを見る。
「今度は私が気持ちよくなる番だろ?」
そう言って魔理沙は手ごろな木に片手を付いて、腰を突き上げたポーズのままスカートをたくし上げる。
すると下着を着けていない、可愛らしい臀部が露になった。
「ほら、加えてるだけで濡れてるんだぜ?」
その言葉にアリスは目を凝らす。
少し見づらいが、確かに魔理沙の股間はわずかな月明かりを受けて濡れ光っていた。
『ってなにしてるのよ私は……!』
自分のしていることに気付き、頭を振って意識を戻そうとするアリス。
「あ、ああっ……!」
甲高い声が響き、思わずアリスは肩を震わせた。
男は魔理沙の腰をつかみ、後背位で彼女を貫いていた。
「あっ、いいっ、大きくて……奥まで届いてる……っ!」
肉のぶつかる音と水が掻き混ざる音がアリスの耳に届く。
「んぁ! む、胸はだめだぜ……」
腰を振りながら男は魔理沙の胸を服の上から揉みしだいている。
我慢できずに男は魔理沙の服を強引に破り、直に胸を弄りだす。
「こ、こら……だからだめだって……ふぁ! 乳首は弱いんだよぉ……!」
可愛らしくあえぐ魔理沙に男の興奮も高まってきたのか、荒々しく魔理沙を犯しだした。
「あっ、ああっ! はげし……すぎるぅ……!」
あまりの快感に魔理沙も立っていられなくなってきたらしく、木に身を任せるようにもたれ掛かる。
「いいっ……気持ちいいよぉ……もっと、もっといっぱいぃ……」
その言葉に答えるように、男は魔理沙の腰を掴みなおしさらに激しく腰を振りたてた。
「あひっ! だめ、もうイク……イっちゃうぅ!」
最奥まで勢いよく突きこまれると、頤をそらしながら魔理沙は背筋を伸ばす。
男もう限界に達したのか、そのまま魔理沙の奥で果てた。
「あ……あぁ……でてるぅ……オ○ンコにたくさん……」
木にもたれ掛かりながら魔理沙は膣で精液の感触を味わっている。
『そんな……膣に出して大丈夫なの……?』
耳まで赤く染めながら、いつしかアリスはわずかに身を乗り出しながらその情事を見つめていた。
「はぁ……はぁ……やっぱり……膣内射精は最高だ……ぜ……」
そういって振り返る魔理沙。
『!!』
ほんの一瞬、アリスと魔理沙の視線が交わる。
『ど、どうしよう……』
突然のことに、思考がうまく回らない。
「ははっ、なんだ……まだ元気じゃないか……」
気にしてないのか、それとも気のせいだったのか。
魔理沙は男のほうに目をやると再び淫蕩な目で喋りだす。
「いいぜ、今日はサービスだ。もっとたくさん、犯してくれよな……」
魅惑的にそういう魔理沙。
そのまま二回目の情交が始まった。
『い、今のうちに逃げないと……!』
行為に没頭している間なら多少の物音は気にしないはず。
とにかくアリスはこの場から離れることにし、それでも物音を極力立てないように去った。
「あっ、あっ! いいっ!」
離れているというのに、なぜかアリスの耳にはいつまでも魔理沙のあえぎ声が届いていた。



勢いよくアリスは自宅のドアを閉め鍵を閉め、鍵をかける。
そのままドアにもたれ掛かりながら、ゆっくりと床にしりもちをつく。
「まさか……魔理沙が……」
今でも信じられない光景だった。
少なくとも、アリスの知る魔理沙は色恋沙汰には疎いように見えた。
もちろん勝手な主観だからそうでない可能性も十分にはあるが。
「でも……すごかったなぁ……」
生で初めてみる男と女の交わりを思い出し、アリスは頬を染める。
しばらくそのまま惚けていると、何かに気付いたかのように頭を振るアリス。
「あぁ〜! もうっ! いい加減にしなさいよ!」
さっきからずっと頭に浮かぶ情交の光景を忘れるように自分の頭を叩き始める。
しかし、流石に痛くなったのかすぐに止めてしまった。
「はぁ……寝よ……寝て忘れよう……」
アリスは服を脱ぎ、下着姿になるとそのままベッドに身を投げる。
毛布に包まり、目を閉じるとやがて意識が薄くなっていく。
明日になれば気分も落ち着くだろう。
少なくとも魔理沙が見つかったということはある意味で収穫だ。
そう思いながらアリスはゆっくりと眠りについた。


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